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性的視線の変化についての質問に答える―「ジェンダー論」のコメント票から(5)― [お仕事(講義・講演)]

5月15日(木)
GW前の第3講「『性』と社会を考える(2)― セクシュアリティ論の基礎 ―」の中で、セクシュアリティの構築性の事例として、日本における乳房への視線の変化、つまり母性の象徴であって、必ずしも性的(エロ)なものではなかった乳房に対して、ある時期以降(転換点としての1980年代)、性的視線がどんどん強まっていったことを話した。

それに対する、学生さんの質問。
(質問1)「なぜ1980年代に乳房へも視線が変化していくのでしょうか?」
(回答)「たいへん難しい問題です。乳房への視線の変化を指摘している井上章一さんも「なぜ変わったのか」については言及していません。
私見では、大局的には敗戦後の占領期に始まる、乳房に過剰なエロスを見るアメリカ大衆文化が日本人男性にも浸透した結果と見るべきだと思いますが、同時にメディアの変化(AVビデオの普及)、漫画アニメーションなど二次元的媒体における女性の身体イメージの誇張、さらには日本男性の「マザコン」傾向などさまざまな要素が絡むと思われます。
もっと緻密な資料蓄積と分析が必要な問題だと思うので、これくらいで勘弁してください。

(質問2)「近代化以前、男性の性的視線は、乳房でなければ、女性のどこに向いていたのでしょうか?」
(回答)江戸時代にも乳房が好きな男がいなかったわけではないと思います。でも、そういう男が多かったとも思われません。
では、乳房でなければ、どこかと言えば、ありきたりな回答になりますが、まずは性器でしょう。
江戸時代の春画が男女の性器を大きくかつ緻密に描写しているのは、やはりそこに視線が行っていたからだと思います。
それ以外に前近代日本の性的視線の特質といえば、「うなじ」ではないでしょうか。
斜め後方から「うなじ」に焦点がある美人画の存在や、現代でも京都も舞妓さんがする襟白粉の工夫など、「うなじ」への視線が意識されていると思います。
ちなみに「うなじ」に相当する英語はありません。
日本人は、そこを意識していたからこそ、そこを示す言葉があるのだと思います。

ただ、女性の髪型が垂れ髪の時代には「うなじ」はほとんど見えないはずで、「うなじ」に性的視線が行くのは女性が髪を上げて「うなじ」が見えるようになってからのことだと思われます。
具体的に、女性の結髪が一般化するのは江戸時代初期~前期のことで、「うなじ」への性的視線もその頃から強くなったのではないかと思います。
これもまた、セクシュアリティの構築性の一例と考えられます。
うなじ1.jpgうなじ5 (3).jpg
(左)喜多川歌麿「湯上がり化粧美人」   (右)私が好きな「うなじ」
うなじ2.jpgうなじ3.jpg
舞妓さんの襟白粉の形。
普段のお座敷では「襟足」は二本足(左)だが、正装時(正月・八朔など)には三本足(右)になる。
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コメント 5

ふぶら

酒場のヨタ話の類いなのですが…「巨乳」に人気が集まる様になるのが1980年代との事、その1980年代のトピックの一つ「男女雇用均等法」に関連してるという説も(微笑)。
なんでも男女雇用均等法は「男性の権利が女性に侵害される」的なへんてこな解釈もありうるそうで(謎ですが)、つまり女性が経済力をつけたり社会的地位を上げたりする事はある種の男性にとっては恐怖なんだそうです。で、過剰に女性的なモノがより必要になり、いやしてくれる女性の象徴としての「乳房」の大きいのによりひきつけられる…? とかいう。
何だかトンデモな気もするのですけと、こんな理由付けもあるという事で…。実際は男女雇用均等法が出来ても凄い性差別いまだに、ですし…自分は単に日本の栄養状態が良くなり日本人の体格も向上して、輸入された西欧的な美意識に合致する胸の豊かな女性も現実に増えたのが大きい気がしています。昔の日本はごく僅かの人々が富を独占、大多数の人々は食うや食わずだったとか聞いていますし…。
by ふぶら (2014-05-18 19:47) 

三橋順子

ふぶらさん、いらっしゃいま~せ。
たしかに時期的には男女雇用均等法(1986年)の頃ですが・・・(苦笑)
当時の実感をもっている世代の1人として言えることは、男女雇用均等法の実質、さらには女性の社会進出に対する男性の脅威感というものは、80年代にはほとんどありません。
当時は「バブル経済」で、経済のパイ自体がどんどん大きくなり、人が足りない時代ですしたから。
女性の社会進出が男性のポジションを奪うという脅威になってくるのは、不況でポストが増えなくなった1990年代後半以降のことだと思います。

コメント後半の「日本の栄養状態が良くなり日本人の体格も向上して、輸入された西欧的な美意識に合致する胸の豊かな女性も現実に増えた」ということ、ひとつの大きな要因だと思います。
このこと、少し軽視していました。
このことも組み込んで考えます。
ありがとうございました。
by 三橋順子 (2014-05-21 03:42) 

ふぶら

はい…「男女雇用機会均等法」施行即、社会全体男性への脅威になったかというと疑問です。
ただ自分は当時、高卒のOLとしてある保守的な会社に勤務でしたが、均等法施行前後の職場の一部のオジサマ方は大混乱でした。どうやって既得権を女性から守るか? に必死なオジサマ方は、世間より随分早めに「均等法への被害者意識」を持った様にも見えましてもしかしたらと…でも、信憑性は薄いですよね、やはり。すみません。それより「国民の様々な世代で『巨乳のメリットを生かしづらい和装』が日常着として完全に廃れた」の方が、まだ理由になるのかも?
日本人がそこそこ食べられる様になり、衛生環境が整ったのは、本当にごく最近の事に思えます。江戸時代は勿論明治でも、脚気で兵隊さんが何万人も亡くなられてしまったり(軍医・森鴎外の判断ミスとの説も?)、日本住血吸虫他病害虫に苦しめられたたり、戦中戦後しばらくは飢餓の時代…長い間、日本人の大半は「身体を十全に発育させる事」そのものから縁遠かったかと…。「国民病」とも言われた結核を患っていては、素質があっても巨乳にはなれなかった気がします。
by ふぶら (2014-05-23 13:45) 

三橋順子

ふぶらさん、いらっしゃいま~せ。
>どうやって既得権を女性から守るか? に必死なオジサマ方は、世間より随分早めに「均等法への被害者意識」を持った様にも見えまして
なるほど・・・、現場を見ていた方の証言は貴重です。
彼らなりに、将来の事態を、オジさんの勘で予感してたのでしょうね。

巨乳がデメリットになる和装が日常衣服として廃れたというのも、なるほど・・・と思いました。本来、私の専門のはずですが・・・。
それより、忘れていけないのは、ご指摘の栄養状態の改善ですね。
いくらイメージとしての巨乳が男たちに支持されるようになっても、現実の巨乳の女性がめったにいない状況では、それほどの騒ぎにはなりません。
やはり、現実に巨乳の女性が栄養状態の改善で増えてきたことが、基礎条件として重要だと思います。
by 三橋順子 (2014-05-24 17:31) 

ふぶら

連投すみません。「男女雇用機会均等法」施行前後のオジサマ方の混乱は、予感という部分と同時に「現実の諸問題」でもありました。「既得権を守る」には、具体的対策を余儀なくされたオジサマ方でした(苦笑)。
何しろ均等法第一世代の女性は超厳選された優秀な人材、当時一般的だった「女子社員だけ早朝出勤で清掃や茶碗・灰皿洗い」を押し付けづらい、つまり「自分で机をふいたり茶碗や灰皿を洗えというのか?お茶もいれて貰えないのかコノヤロー!」的な既得権の侵害が(笑)。「一般職」「総合職」の新人事コースで「性差別ではない」表向きである以上、仕事のあれこれもルール化・明文化する必要があり手間がかかる。建屋によっては「女子トイレ」「女子更衣室」、全国区型の女子社員採用に対応すべく「女子寮」の整備等、ハード面でもコストがかかる。ついでに中卒・高卒や短大・専門学校卒の女子社員と違い、優秀な人材にはセクハラ(当時はそんな言葉も無かったかも?)もしづらい(苦笑)…ある種のオジサマ方にとっては、あの法律は「災厄」以外の何者でもなく相当な被害者意識を募らせたのではなかったのかと。
「だから女なんぞを入れるのは…」と憤るオジサマ方を、自分みたいな高卒女子社員はさめた目で眺めていました…。あの当時の狂想曲、思い出しては失笑するばかりです。
「日本人の体格向上」については、老父母曰く「正座の習慣が無くなって足が伸びた」のもあるんじゃないか? でした。確かに、巨乳がかたちよく見えるプロポーションには身長も関係しているかもしれないと思ったりします。
by ふぶら (2014-05-25 07:42) 

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