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(資料紹介)朝山蜻一『女の埠頭―変貌する青線の女たち―』 [性社会史研究(遊廓・赤線・街娼)]

11月16日(日)
先日、国会図書館で、朝山蜻一『女の埠頭―変貌する青線の女たち―』を閲覧した。

【書誌】
朝山蜻一『女の埠頭―変貌する青線の女たち―』
1958年(昭和33)4月、同光社出版株式会社東京千代田区神田佐久間町)の刊行。
285頁、内、著者撮影の写真16頁。
縦19cm(B6版)。
定価280円。
女の埠頭.jpg
↑ 表紙カバー
国会図書館の蔵本にはカバーがないので「荷風歡樂」の画像をお借りした。
http://rossana.cocolog-nifty.com/earima/2013/06/post-b10c.html
女の埠頭(内扉).jpg
↑ 内扉

【著者】
朝山蜻一(あさやま せいいち 1907~1979年)
本名、桑山善之助、1907年(明治40)7月18日、東京日本橋で生まれる。
映画の助監督やレタリング業を経た後、小説を書き始める。
戦後、1949年に「百万円コンクールC級」に応募した小説「くびられた隠者」が『別冊宝石』1949年12月号』に掲載されてデビュー。
1952年、「巫女」(『別冊宝石』1952年6月号掲載)が「新鋭コンクール」第1位となり、探偵作家クラブの『探偵小説年鑑』1953年版に収録された。
1954年、「ひつじや物語」(『宝石』掲載)が「第7回探偵作家クラブ賞」候補に、1955年、「僕はちんころ」(『宝石』掲載)が「第8回日本探偵作家クラブ賞」候補となった。
1956年、第一短編集『白昼艶夢』(久保書店)刊行。
1957年、『処女真珠』(榊原書店)刊行。
1958年4月、初めての長編書き下ろし小説『女の埠頭―変貌する青線の女たち―』(同光社出版)刊行、デビュー作のコンクール審査員だった縁で江戸川乱歩が序文を書いている。
同年9月、短編集『悪夢を追う女』(あまとりあ社)刊行。
同年11月、『密売者』(同星出版)刊行。
1962年 『真夜中に唄う島』(雄山閣)刊行。
晩年(1976年)、『幻影城』に「蜻斎志異」を連載した。
1979年2月15日、腸閉塞で死去。
その他、本名で思想や数学についての著書も発表し、またアマチュア発明家としても知られた。
自宅は新宿花園街の青線地帯の一角にあった。
(要参照)「新宿花園物語―探偵文壇側面史―)」(『幻影城』1975年11月号 No.11)

(参照)はらぴょん氏「朝山蜻一書誌」
http://www.cna.ne.jp/~kuroneko/newpage479.html

当時のジャンルで言うと探偵小説・推理小説の作家だが、現代では、サディズム&マゾヒズム、あるいはフェティシズム系の小説の源流として再評価されているようだ。

【目次】
• 墮ちた天使 / 13
• 追出された女たち / 72
• 新しい寝床 / 95
• 花園の快樂 / 121
• 肉體のもつれ / 149
• 絞り出された血 / 184
• 血の筋を追つて / 211
• 袋に入れられた女 / 236
• 二人の出口 / 263

【主な登場人物】
水田赤江「和田組マーケット」の飲み屋「百楽」のママ。「協栄社」の露店を経て、三光町「一の通り」南側に移転。
帝国大学教授の妻だったが、戦時中に夫が病死、高円寺の家に娘2人と住む。
森戸渥子「和田組マーケット」の飲み屋「矢車」のママ。後に三光町「一の通り」北側に移転。「和田組マーケット」では『百楽』の二軒隣。三光町では向かい。
元は資産家の海軍将校の妻で有閑マダムだったが、夫の戦死後、婚家を出て、森戸七介と再婚し、大久保の家に住む。
トミー(中枝とみ) 「和田組マーケット」の南部を占める「六十三軒」の「ふきや」の二階を拠点に進駐軍の将校を相手にするパンパン。
元「浮浪児」(戦災孤児)で、(1948年)17歳だが、重度のヒロポン中毒。
赤江の店で流産する。簡単な英会話ができる。
帰国した進駐軍の将校からもらった金で「ラルホ」を買い取る。
大島豊雄 ヒロポンの密売人で、トミーが買い取った「和田組マーケット」の飲み屋「ラルホ」のマスターになる。
「協栄社」の露店を経て三光町「一の通り」南側に移転。
トミーに惚れている。
千吉 新宿南口マーケットを仕切るテキ屋「和田組」のチンピラ。
豊雄の子分の少年。
森戸七介 渥子の夫の自称詩人。
「源兵衛」のオヤジ 「和田組マーケット」で赤江の店の向かい側にある飲み屋「源兵衛」の店主。
顔が広く土地の客を多く持ち、娘の浪(なみ)と店を切り回す。
赤江に親切で酒を卸してくれる。
後に三光町「三の通り」に移転。
「ラルホ」のマダム 「和田組マーケット」の飲み屋「ラルホ」のママ。
10万円の価値がある店を7万円でトミーに売る。
上州屋(笠荒) 夫婦で焼鳥屋を経営。三光町「一の通り」の北側、「矢車」の隣に移転。
渥子の話し相手。自宅は富久町。
三海麻里子(マリー) 三光町「一の通り」北側にある「カテリナ」のママ。
若いが商売上手。
関川 闇売買で服役していたが、1949年冬に出所。
その後、トミーを利用して詐欺罪で逮捕。
再度の服役の後、三光町の飲み屋「ひょうたん」を乗っ取ってマスターになるが、殺される。
大野木 淀橋署?の刑事。詐欺の容疑で関川とトミーを逮捕する。
館川 赤江の店の客。赤江と肉体関係がある。
高坂 赤江の店の客。赤江の愛人。

【あらすじ】
東京新宿駅南口に広がる闇市「和田組マーケット」に生活する3人の女、飲み屋「百楽」のママ赤江、「矢車」のママ渥子、「ポン中」のパンパン(進駐軍相手の娼婦)のトミーの10年間の変転を描く。
冒頭シーンは1948年、新宿駅前闇市の末期、ラストシーンは1958年3月の「売春防止法」完全施行直前。
新宿駅南口「和田組マーケット」の終末から三光町「花園小町」の創設とその「青線」街化、そして「売防法」完全施行による「青線」の終末という、戦後混乱期の新宿の変遷を、そこに生きた3人の女を主人公にリアルに描く。
また、「ポン中」(ヒロポン=覚醒剤中毒者)の生態も生々しい。
後半は、闇ブローカー関川の殺人をめぐって探偵小説仕立てになる(探偵役は渥子)。

【感想】
新宿の「青線」についての論文資料として閲覧したが、著者が同時代人である上に花園青線街に居住していただけあって、新宿駅南口の「和田組マーケット」の人たちが三光町に移転する経緯が詳しく書かれている。
今まで未確定だった移転の時期をほぼ確定できただけでなく(略年表参照)、「青線」化していく事情もよくわかった。
当時の世相に取材したエピソードや、建物の構造なども興味深い。
新宿の闇市の資料としても、十分に使える。
また、併載されている著者自ら撮影した新宿の写真も資料として貴重。
さらに、小説としてもなかなか達者で十分に読ませる。
近年、著者の再評価が進んでいるせいか、『女の埠頭―変貌する青線の女たち―』も、古書市場では4~8万円ときわめて高額で、貧乏研究者にはとても手が出ない。
国会図書館では「電子化資料」になっているが、著作権の関係で、1人で全部はコピーできない。
そのことを編集者の赤岩なほみさんにお話ししたら、未収取分をコピーしてくださった(感謝)。

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コメント 1

茶園です

昨日はありがとうございました。
『女の埠頭』たしかに京大図書館も、関西の図書館もありませんでした。
もうすでにご存じだとおもうのが、鹿児島県立図書館と北海道立図書館に
あるようですね(国会図書館の検索にて)
お取り寄せはむずかしいでしょうか??

国会図書館での協力者が一番ですけどねえ。。。

by 茶園です (2014-11-22 18:15) 

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