So-net無料ブログ作成

3月21日(月・祝)「トランス物語に抗して against a trans narrative」上映会 [現代の性(性別越境・性別移行)]

3月21日(月・祝)

「トランスネット東京(TNT)」主催の映画「トランス物語に抗して against a trans narrative」(Jules Rosskam監督、2009年、アメリカ)上映とトークイベントに参加。

会場の「loopolic キノシタ商店」(東京都世田谷区)は東急大井町線上野毛駅から「第三京浜」を多摩川方向に10分ほど歩いた場所にある民家を転用したイベントスペース。
立ち見の人が大勢出る超満員。

映画は、アメリカにおけるフェミニズムとレズビアニズム、そしてトランスジェンダリズムの三者関係をベースに、FtMトランスジェンダーを取り巻く現実(身体の変化、恋人との関係の変化、医療へのアクセスetc)をドキュメンタリー風に描いた作品。

FtMトランスジェンダーの在り様そのものを描くというより、フェミニズムやレズビアンとトランスジェンダーの相克を描くことに主題がある作品で、そこらへんの基礎知識がないと、解りにくかったと思う。

たとえば、映画の中で、アフリカ系のFtMやスパニッシュ系のレズビアンが登場したり、「class」という言葉が何度も語られるかといえば、人種(race)・民族(ethnicity)、性的指向(sexual orientation)、階層(class)こそが、第三波フェミニズムがそれ以前のフェミニズムを批判した論点だからだ。

トークイベントでは、そこらへんの解説がもっとなされるかと思ったら、そうでもなかった。
せっかく一つの映画を見て、大勢の人が作品を共有して語り合う機会なのだから、もっと作品に則したトークをしてほしかった。

さらに言えば、フェミニズムとレズビアニズム、そしてトランスジェンダリズムの三者関係について、アメリカの状況と日本の状況の違いに話が及べば、いっそう有益だったと思う。

トランス物語に抗して.jpg
↑ 映画に何度か出てくるボクシング・シーン。
女性ボクサーのシャツの文字に注目。
フェミニズムとの相克が主題であることが一目瞭然

性同一性障害「認定医」、学会が9人発表 [現代の性(性別越境・性別移行)]

3月21日(月・祝)

「GID認定医」、実は認定のための研修会の実施の仕方(スケジュールなど)にやや問題があり、研修会を3回やった時点で、認定に必要な「単位」を取れたのが、今の時点で9人しかいなかったというのが現状らしい。

だから、当然認定されるべき実績がある先生がかなり漏れている。

このペースだとある程度の数の「GID認定医」が揃ったくらいの時期(2017年以降)に、国際的な疾病リストから「GID(性同一性障害)」が消える予定。

---------------------------------------
性同一性障害 認定医、学会が9人発表 20人以上診断

体と心の性別が一致しないことで苦しむ性同一性障害(GID)の診断や治療の充実を目指し、認定医制度を導入したGID学会(理事長・中塚幹也岡山大教授)は20日、初の認定医9人を発表した。専門的な知識や技術を持つ認定医が増えることで、治療の質が確保され、治療施設が広がることが見込まれる。将来的に保険診療の道が開ける可能性もある。中塚理事長は「認定医制度を通じて、GIDの治療は必要な医療だということを、社会にも理解してほしい」と話している。

認定医は、精神科や産婦人科、泌尿器科、形成外科などの専門知識や技術に加え、性別の違和感を抱える子どもたちに対する学校の対応など社会的な課題を知ることも求められる。20人以上を診断した経験があり、関連の論文や著書があることも条件。今回は、既に実績のある学会理事らが認定医となった。

GIDの治療は、ホルモン療法のほか性器の形成手術などがある。戸籍の性別を変更するためには、性同一性障害特例法で精巣や卵巣の摘出といった「性別適合手術」が必要とされる。2004年の法施行から14年までに5000人以上が性別変更を認められたが、国内で手術を手がける施設は限られる。

年間50件ほど実施する岡山大は来夏ごろまで予約が埋まっており、1件数十万〜百数十万円かかる。タイなど費用が安い海外で手術を受ける人が多いとされる。海外での手術は、術後ケアが不十分になる可能性もある。

中塚理事長は「日本で安全な医療を提供できるのが望ましい。各県に認定医がいれば手術などを行うチームが作れる」と語る。今後は試験を経て認定する仕組みを整え、5年間で50人の認定医育成を目指す。【五味香織】

GID学会が発表した認定医(敬称略)

阿部輝夫(あべメンタルクリニック=千葉)▽石原理(埼玉医科大病院)▽内島豊(赤心クリニック=埼玉)▽織田裕行(関西医科大滝井病院=大阪)▽康純(大阪医科大病院)▽中塚幹也(岡山大病院)▽針間克己(はりまメンタルクリニック=東京)▽松本洋輔(岡山大病院)▽百沢明(山梨大病院)

 ■ことば
GID学会の認定医
学会が適切な診断や治療ができると認めた医師で、公的な資格ではない。認定を受けていなくても診断・治療は可能で、今回も十分な実績がありながら必要な研修が受けきれなかったなどの理由で認定されなかった医師もいるという。認定医制度には、専門的な人材育成を図るとともに、医療の質を確保する狙いがある。

『毎日新聞』2016年3月21日 東京朝刊
http://mainichi.jp/articles/20160321/ddm/041/040/071000c

3月20日(日)第18回「GID(性同一性障害)学会」研究大会(2日目) [現代の性(性別越境・性別移行)]

1月20日(日)  晴れ  東京  19.0度  湿度28%(15時)

6時20分、起床。
昨夜は1時帰宅、2時半就寝なので、身体が辛い。

8時過ぎ、家を出る。
東急目黒線から都営地下鉄三田線に乗り入れて、神田神保町駅で下車。
9時10分、一橋の「日本教育会館」へ。
IMG_6566(2).jpg
電車の接続が悪く、約10分の遅刻。

第18回「GID(性同一性障害)学会」研究大会の2日目。
第二会場(8階)で「一般演題4:心理学・教育学」を聴く。
抄録を読めばわかるような定型的な研究報告が続き、とても眠くなる。
私の「特技?」の半分眠りながら聞いている状態。

そこに「違うよ!」という声を揃えての野次。
しかも聞き覚えのある声。
(後で聞いたら、たまたま声が揃ったとのこと)
これで、目が覚めた。

藤田志保さん「小学生の頃のFTM 当事者の「封じ込める」体験とカミングアウトの困難性」という報告の質疑応答で、小学校の先生が「GIDは各クラスにひとりかふたりいる。自分も何人も会ってきた」と発言したのに対するもの。
その先生、野次にめげず「いたんです!」と強調。

GIDは多めに見ても、10000人に3~5人程度で、各クラスに1人はいない。
「各クラスに1~2人」というのは40人学級として20~40人に1人。
つまり、2.5~5%で、それは同性愛者の比率に近い。

文部科学省が同性愛の存在を隠蔽した「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」という通達(2015年4月30日)を出した際に、私が危惧したことは、教育現場で(ヘテロセクシュアル&シスジェンダーを典型として)「非典型な」性の在り様をもつ児童・生徒がいた場合、同性愛の可能性が考慮されず「性同一性障害」と誤認されてしまう危険性だった。
それがまさに現実になっている。

そもそも、学齢期の性別違和感は、きわめて不定型、不安定で、強弱の度も様々。
それを「GIDがいる」と言いきってしまうのは、土肥いつきさんが指摘しているように「教員がGID(の生徒)を作り育てていく」ことに他ならない。
う~ん、困ったもんだなぁ。

10時20分、メイン会場(3階)に移動して、シンポジウム3「中年期・老年期のGIDに対する理解と支援」を聴く。
今までほとんど無視されてきた中年期・老年期のGID問題が初めてシンポジウムに組まれた。
そういう意味で画期的な取り組み。
ずっとこの問題の重要性を言ってきた老年トランスジェンダーの1人として、とてもうれしく、かつ、ありがたく思う。

とりわけ石丸径一郎さんの「中年期・老年期の性同一性障害当事者にみられる特徴と支援」は、「はりまメンタルクリニック」(東京・神田小川町)に蓄積された3312人の症例(MtF1211人、 FtM2101人)をベースに、初診時40歳以上を「中高年」とした詳細な分析で、まさに圧巻。
40歳以上はMtFでは28.4%(344人)であるのに対し、FtMは6.7%(141人)で、MtFで顕著に比率が高い。

大卒以上の学歴は、40歳以上はMtF42.7%、FtM17.0%とかなり差がある。
これに対して39歳以下では、MtF25.1%、FtM22.6%とほとんど差がなくなる。
高学歴のMtFの比率が顕著に低下する。

性的指向(Sexual Orientation)は、40歳以上のMtFでは、→男が39.5%、→女が25.9%、「女好き」が約4分の1いる。
FtMでは、→女が80.9%、→男が7.8%で、圧倒的多数が「女好き」。
39歳以下のMtFでは、→男が45.4%、→女が24.5%、とやや「男好き」が増える。
FtMでは、→女が87.9%、→男が3.6%で、さらに「男好き」の比率が高くなる。

現在または過去に結婚していた人は、40歳以上のMtFでは44.5%、FtMでは19.9%で、結婚経験があるMtFの比率が顕著に高い。
39歳以下のMtFでは6.0%、FtMでは1.3%。

子供がいる割合は、40歳以上のMtFでは29.1%、FtMでは10.6%で、子供がいるMtFの比率がかなり高い。
39歳以下のMtFでは2.8%、FtMでは0.6%。

また、39歳以下のFtMの50.2%にパートナーがいるというデータも興味深い。

全体を通じて、40歳以上のMtFのライフスタイルは、他の3群とかなり異なっている。
こうした傾向は、従来から知られていたが、それが数値としてはっきり示された価値はとても大きいと思う。

質疑応答の際に、「初診時の年齢でなく、生年で分析できないでしょうか」と提案した。
新宿の女装コミュニティの観察から、性同一性障害概念の受容の仕方に世代差があり、それにともなってライフスタイルも異なるように感じているからだ。
あくまでも私の印象だが、1965年生まれくらいを境に、分れるような気がする。
性同一性障害概念が流布し始めた1998年に33歳くらいの世代(現在50~51歳)が分岐点のように思う。
それより上の世代では、性同一性障害概念に受容的ではなく。それより下の世代では受容的になっていく。
それがライフスタイルに現れるのではないかという予測。
もちろん、個人差・地域差があるだろうが。

続いて、針間克己先生の「中高年における性別違和の現状と課題」。
いくつか挙げられた課題の中で「若い頃、ニューハーフだったMtF。若い子の多い業界への再就職は困難。ほかの仕事のスキルもなく」は、私が10年以上も前から感じていること。
かなり深刻な問題で、生活面では生活保護受給者になる可能性が高いが、精神面での落ち込みがひどく、結果、自殺につながるケースも多い。
そもそも「ガイドライン(初版)」が当初、ニューハーフを診断と治療の対象から排除していた経緯もあり、GID学会の議論でニューハーフが話題になることはほとんどない。
今後は、もっと目配りすべきだと思う。

3つ目、松本洋輔先生の「加齢とライフサイクルに配慮した老年期の当事者支援~高齢者の健康と性差・性役割を考える~」は、長谷川町子『いじわるばあさん』を例に、高齢期におけるジェンダー・イメージの変容を論じる。
『いじわるばあさん』に「性の転換」をするおじいさん(男→女)が登場するのが昭和42年(1967)とのこと。

1967年頃は「ブルーボーイ事件」をきっかけにした「第二次性転換ブーム」の時期であり、カルーセル麻紀さんがマス・メディアに登場した時期でもあり、「長谷川さんは、そうした週刊誌記事などからネタを拾ったのではないでしょうか」とコメント。

4つ目、鶴田幸恵さんの「『在職トランス』と職場の声」は2つの「在職トランス」事例の調査。
「在職トランス」を受け入れた周囲の人たちのインタビューが、実にリアルで、その論理が面白く、エスノメソドロジーの名手のまさに真骨頂。
GID学会では、あまり語られないトランス成功例の分析であることも重要。

ああ面白かった。
このシンポジウムだけで、今回の研究大会の価値は十分にあったと思う。

昼食は、土肥いつきさんたちと、神保町「すずらん通り」のインド料理屋「マンダラ」へ。
IMG_6568.JPG
↑ Cセット(1030円)、これにデザートがつく。
ナン、もう少し大きいといいな。
IMG_6569.JPG
↑ エッグカレーのホット、かなり辛かった。

「遅刻しないように!」という針間先生の厳命だったので、早めに会場に戻る。
原科孝雄先生(初代理事長)にご挨拶。

13時、二代目理事長だった大島俊之先生(2月19日逝去)を「偲ぶ会」。
全員で黙祷の後、原科先生の追悼の辞。
IMG_6572(2).jpg
続いて、親交が深かった方を代表して針間克己先生が「大島先生の思い出」を語る。
IMG_6574(2).jpg
針間先生、最後は涙。
IMG_6575(2).jpg

14時、再び第二会場(8階)に移動。
「一般演題5:当事者・支援団体」を聴く。
丹羽奈緒子さんの「当事者の経験からみる個人で出来るMtF変声ボイストレーニングの実践方法」は、とても有意義な報告。

MtFの声の女性化(女声化)については、今までの研究大会で、何度も研究報告があったが、必ずしも説得力のあるものではなかった。
その理由は、ピッチ(音程)に重心があるものが多かったから。
私は、当初から、女声化のポイントは音程ではなく、音色にあると言ってきた(さらに言えば、言い出しと言い終わりの仕方)。

あまり低音では困るが、高音化すれば女声に聞こえるかと言えばそうではなく、むしろ「アニメ声」(私は「壊れたおしゃべり人形のような声」に例えてきた)のような奇妙な声になり、かえって「耳につく」(目立つ)ようになってしまう。

丹羽さんの報告は、まず「MtFにとって、女声とはモノマネだ!」という規定が秀逸。
MtFの女声化の基本は、ネイティブな女性の声をしっかり聞いて、それをどうテクニカルに再現するかに尽きるので、まさにその通り。

その上で、ピッチよりもフォルマント(音声のスペクトル)を重視する。
そして、より女声に近づくために、声道を調整するテクニックと声に関わる筋肉を鍛える(声の筋トレ)トレーニング方法を機器を用いて合理的かつ科学的に提示する。
今までの報告に比べて、有用性が高いと思い、その旨をコメントした。

ただ、本人は「男声」のつもりで実演している声が、どうしても「やや低い女声」にしか聞こえなかったのはご愛敬。

メイン会場に戻って、最期のシンポジウム「ジェンダーと精神疾患 ―哲学との対話。
哲学の先生方の話はあまりに高尚かつ抽象的すぎて、愚昧な私には理解不能。
2日間の疲れもあって、ほとんど居眠り。
ただ、松永千秋先生の「DSM における性同一性障害概念の変遷と精神疾患概念 ―性同一性障害と精神病理性に関する議論の前提として―」だけは、しっかり聴く。

17時、閉会。
参加者はゲストを含めて約430名とのこと。
大会長の松永千秋先生、ありがとうございました。

第19回研究大会は、2017年3月18日(土)、19日(日)に北海道の札幌医科大学で開催(大会長:舛森直哉先生)。
テーマは「GID治療の未来ー当事者と医療者の融合ー」。
おそらく、その年の内に国際的な疾病分類から消え「死語」となるはずの、余命いくばくもない「GID」の未来について討論する有意義な会になるはず。
そして、再来年2017年の第20回記念大会は、東京で開催(大会長:針間克己先生)。
会場は、北の丸の武道館か、それとも後楽園ドームか、あるいは文京シビックホールか未定。

17時半過ぎから神保町「さくら通り」の中華料理「上海庭」で、有志の懇親会。
祭壇から回収してきた大島先生の遺影を壁に貼って、お酒を供える。
IMG_6595 (2).JPG

約5時間半、同じ会場で延々と酒宴。
でも、この場がいちばん有意義で楽しかった。

23時、康純先生が大島先生の遺影を回収して、散会。
昨夜と同様に、佐々木掌子さん、鶴田幸恵さんと神保町駅から都営地下鉄三田線に乗る。
昨夜より1時間早い。

0時、帰宅。
疲れた・・・。

就寝、3時。