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「LGBT」という言葉の起源について [現代の性(同性愛・L/G/B/T)]

4月4日(土)
昨夜書いた、某新聞社記者(2日に長時間レクチャーした記者さんとは別の人)の質問メールに対するお返事。
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メール拝見いたしました。
お尋ねのLGBTという言葉ですが、この言葉が公的な文書で使われた最初は、2006年の「レスビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの人権についてのモントリオール宣言(Declaration of Montreal on Lesbian, Gay, Bisexual and Transgender Human Rights)」であるということが、ほぼ通説化しています。

しかし、私が出席した2005年7月の「Sexualities Genders & Rights in Asia:1st International Conference of Asian Queer Studies」(タイ:バンコク)では、欧米やアジアの活動家が、すでにLGBTという言葉を盛んに使っていました。

私がLGBTという言葉を最初に知ったのは、その2年前の2003年12月に台湾国立中央大学で開催された国際シンポジウム「跨性別世紀」だったと思います。
どうも、もともとは、いわゆる「活動家」の用語ではないかという気がします。

そもそも、欧米におけるセクシュアル・マイノリティの運動は、完全にゲイ・レズビアン主導で、そこにバイセクシュアルを加えても、トランスジェンダーの陰はきわめて薄く、むしろゲイ・レズビアンからも差別されていた状況があります。
セクシュアル・マイノリティ=ゲイ&レズビアンという感覚だったのです。
そこらへん、歴史的にトランスジェンダーが優勢だった日本とは状況が大きく異なります。
そうした欧米の状況の中で、トランスジェンダーを(そしてバイセクシュアルも)掬い上げる言葉としてLGBTが使われるようになったと思われます。

欧米の「活動家」たちが使い始めたのがいつ頃か?ということになると、よくわかりません。
ただ、1995年に初めてお会いした東優子さん(大阪府立大学教授)は使っていなかったように思います(ご本人ではなく、私の記憶ですが)。
東さんはハワイ大学で学ばれて、用語には敏感な方なので、欧米で「LGBT」という言葉が十分に流通していたら、きっと日本に持ち帰ったと思うのです。
会話の中に「LGBT」という言葉が出てきたら、知りたがりの私は「それはなに?」と尋ねたと思うのですが、そういう記憶はありません。

それから考えると、欧米で「LGBT」という並びが固定し、言葉として普及するのは1990年代後半以降なのではないでしょうか。

(追記 2016年4月24日)『Oxford English Dictionary(OED)』の「LGBT」の初出は、1992年のゲイニュースダイジェストに"National LGBT Studies Conference"とあるとのこと。
また、「GLBT」の初出は1993年で、2004年にはニューヨーク・タイムズ・マガジンで使われているとのこと(saebouさんのご教示による)。
1990年代前半には、L/G/B/Tという並びが必ずしも固定していなかったのかも。

さて、日本での普及ですが、私が2005年の学会の報告文を書いた頃は、まだまったくと言っていいくらい、LGBTという言葉は世間に知られていませんでした。
たぶん、LGBTという言葉を日本で使ったのは、私がかなり早い方だと思います。

書籍名にLGBTを使った最も早い例は、2007年に出版された藤井ひろみ・桂木祥子・はたちさこ・筒井真樹子 編著 『医療・看護スタッフのためのLGBTIサポートブック』 (メディカ出版)です。
これは、書籍名としては例外的に早く、おそらく編著者の筒井真樹子さんが英文翻訳者で、アメリカの事情に通じていたことによると思います。

かなり通用するようになったのは2010年代に入ってから、さらに言えば2012~2013年頃ではないでしょうか。
大阪府淀川区が「LGBT支援宣言」を打ち出したのが2013年9月です。
2014年頃には、マスメディアで「LGBTと呼ばれる性的マイノリティ」というような言い方が増えてきて、「性的マイノリティ」の同義語、さらには置き換え言葉としてLGBTが使われる傾向がはっきりしてきます。

現在、日本で、LGBTを盛んに使用している人たちは、たぶんこうした経緯を知らないと思います。
単に、欧米で使っているカッコいい、新しい言葉として好んで使っているのではないでしょうか。

もう少し考えている人がいるとすると、「性的マイノリティ」という言葉を嫌って、ということも考えられます。
欧米では、たしかにLGBTによって「セクシュアル・マイノリティ」と言う言葉は駆逐されつつあります。
理由は、人権活動家たちが、自らをマイノリティ=少数者=弱者と規定することを嫌うからと聞きました。
「なぜ、最初から、マイノリティ(社会的弱者)と自己規定するのか? 敗北主義ではないか」ということです。

一理あると思いますが、少数者であることは客観的に間違いないわけで、私は「性的少数者」でいいと思っています。

もう一つ、「性的マイノリティ」という言葉を嫌う理由として、小児性愛者や屍体愛好者など、性的嗜好(sexual preference)系の少数者と「一緒にされるから嫌だ」という人もいます。
小児性愛者や屍体愛好者などsexual preference系までをセクシュアル・マイノリティの範疇に入れる使い方は、私は海外では聞いたことがなく、この理由はたぶん日本特有だと思います。

日本では2006年頃に、小児性愛者や痴漢趣味など、性的嗜好(sexual preference)系の少数者も性的マイノリティに入れるべきだと、主張した人がいたのは事実です。

さて、LGBTという用語の問題点は主に2つあります。
1つは、お気づきの通り、4つのカテゴリーの羅列であり、それ以外のカテゴリーが漏れてしまうということです。
この問題は、欧米でも早い時期から指摘されてきたことで、その対策として、LGBTI(IはIntersex)、LGBTIQ(QはQueer=クィア)、LGBTIQA(AはAsexual=無性愛)など、カテゴリーの羅列がどんどん長くなっていき、それでも何かがこぼれるという状況です。

この点については、カテゴリーの羅列を止めて、「性的指向、性自認にかかわるすべての形態」という概念で包括する方法がより優れていると思います。
日本でも東京都多摩市の「多摩市女と男の平等参画を推進する条例」(2014年1月1日公布)は「すべての人が、個人として尊重され、性別並びに性的指向及び性自認にかかわらず、個人の能力及び個性を発揮し、意欲及び希望に沿って、社会的責任を分かち合うこと。」(第3条)と規定していて、「性的指向、性自認」という言葉で包括する方法を採用し、より先進的だと思います。

もう1点は、LGBTという集団が存在するような誤解を与えてしまうことです。
欧米でのLGBTは、丁寧に表記すれば、L/G/B/Tです。
L/G/B/Tそれぞれが独自のアイデンティティとコミュニティをもち、それらが、必要があれば連帯するという考え方がベースにしっかりあります。
なぜなら、L/G/B/Tは、それぞれに固有の社会的課題を抱えており、場合によってはその得失がL/G/B/Tの間でも相反することがあるからです。
たとえば、男女の社会・経済格差を是正する施策では、LとGの利害得失が相反することがしばしばあります。
特にフェミニズムの影響が強いLは、男権的なGとの共闘は安易にできないという立場を取ることが多いです。
2005年の学会でも、韓国や台湾の活動家は「LBTの連帯(G抜き)で運動を進めている」とはっきり言っていました。

ところが、日本ではあたかもLGBTという集団が存在するかのような、あるいはLGBTの連帯が運動の必然的な前提であるかのような立場をとる人がかなりいて、マスメディアもそうした言説・姿勢を安易に流布することが多いように思います。

こうした傾向は、L/G/B/Tそれぞれのアイデンティティを希薄化し、歴史的な歩み、現在抱えている社会的課題の相違を軽視しかねない点で問題だと私は思います。

まして「私はLGBTです」などという自己紹介は、噴飯もので、国際的にはまったく通用しません。

残念ながら、日本におけるLGBT概念の流布過程を、きちんと調査・追跡した論文はまだないと思います。
ただ、LGBT概念流布以前から活動してきた私の所感は、それほど間違っていないと思いますので、ご参考になれば幸いです。

最後になりましたが、このテーマを記事にして問題提起する価値は、十分にあると思います。期待しています。
それでは、取り急ぎ、お返事まで。

 三橋 順子


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T

初めまして。私はそれこそ物心ついた瞬間から自分とは違う身体であり又、この先の長い人生この身体で生きていかなければならないのかという絶望に襲われ、今も生と死の狭間を懸命に渡っています。
世の中不思議なもので、産まれて間もない頃から性自認を持っているのだと知りました。
さて、LGBT という言葉はどの様に作られたのかを調べると、ここに辿り着きました。
誰が言葉を作った、という単純な歴史ではない為、探るのは用意ではないですね。
これからの内容は当事者からの意見そして事実として聞いて下さい。

LGBT、それに幼児、死体を愛する者は其々性的マイノリティーである事は事実です。
しかし、一つだけ全くの仲間外がいます。すぐに解りますか?
全てのマイノリティーは脳で同性を愛したり幼児や死体を愛します。
しかし、Tに関しては全くの異性愛、つまりマジョリティーです。
胎児期に悪影響やホルモン異常によって身体が脳に伴わなかった可能性が高いとされています。脳と身体が全く別物で産まれてしまった。
産まれた時から腕がなかったことと同様、産まれた時から性器が無かった、あるいはあった、別の物だった、というだけ。そして性器から作られるホルモンによってどんどん見た目は異性のものと化していく。
分類でいえば同性や幼児などを愛する脳の思考とはまったく別であり、分類は奇形です。
奇形を持って産まれたのです。脳は全く普通のマジョリティーだという事をご理解下さい。
しかしながら、ご存知の通りマイノリティーはそもそも絶対数が少ない為、この事実を上手く説明、表現、言い出す人が出てくる事は遅いです。
LGBとTを同一にする事によって、今後の状況、対応や対策、未来は全く変わってきます。
是非この事実を広めて欲しくご協力願います。
宜しければお返事願いたいです。
by T (2019-02-15 13:22) 

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