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「トイレ問題」なんてなかった [現代の性(性別越境・性別移行)]

7月8日(土)

トイレの問題は、いろいろデリケートなので、今まで具体的に書くことをしなかった。
明日(9日・日曜日)に「性的マイノリティとトイレ・フォーラム」があるそうなので、今さらながら昔話を書きとめておく。

1990~94年、私が在籍した東京の女装クラブE館では、外出イベント時のトイレ使用は女性トイレと決まっていた。
女性スタッフがはっきりそう指示する。
「えっ? 大丈夫なの?」という先輩もいたが、少なくとも私が在籍していた間、トラブルは聞いたことがなかった。

正確に言えば、1度だけ苦情が来た。
「男性トイレに女装の人が入ってきて驚きました。止めてください」
その苦情があった後、「ちゃんと女性トイレを使いましょう」という念押しがスタッフからあったのを覚えている。

「女の恰好をしていれば女性トイレ」という考え方が徹底していた。
つまり、gender expression(性別表現)最優先という考え方だ(当時はgender identityなんていう概念はまったく普及していなかった)。
というか、それがいちばんトラブルが少ない方法であることをスタッフが経験的に知っていたのだと思う。

1995年、新宿歌舞伎町の女装コミュニティに活動の場を移したが、店のママからも先輩からもトイレについては、何も言わなかった。
そんなことは自分で始末をつけることだからだと思う。

新宿の街を歩いているとき、女性トイレを使うことはまったく当たり前だった。
というか、女性トイレを使えるレベルじゃないと、街歩きはできない。
まあ、中には、自信がない人もいたと思うが、そういう人はどこの喫茶店のトイレが男女共用かというようなことを熟知していた。

つまり、女性トイレを使えるレベルにない女装者は、新宿ではやっていけない、淘汰されてしまうから(最悪、通報、逮捕されて、コミュニティから消える)、トイレ使用の問題はほとんど起こらない。
だから、「トイレ問題」など存在しなかったのだ。

ちなみに「女性トイレを使えるレベル」というのは、いわゆる「パス」(バレる、バレない)の話ではない。
ちゃんとdoing female gender(女をする)をしているか、どうかという話だ。
「女をしている、しようとしている」ことが明確なら、たとえバレていようが、世の中、だいたい「女」で通用するということだ。

女性トイレ使用のトラブルが急に増えたのは、2000年代になって「性同一性障害」概念が流布し、「心は女性(でも外貌は???)」という人が目立つようになってからだと思う。
換言すれば、gender expressionよりgender identityが重視されるようになってからだ。

「病理」である性同一性障害の人には、社会的淘汰は適用されない。
実力主義の女装コミュニティだったら、淘汰されてしまうようなレベルのMtFが世の中に出てきたとき、「トイレ問題」が浮上してきたということだ。

「gender identityに沿ったトイレを使えるように」という主張がある。
私も基本的にはそうあるべきだと思う。
ただし、トイレの男女二分意識が広く定着している日本社会の現状では、実際にそれを実現するのはかなり難しい。

長年、トランスジェンダー界隈にいると、いろいろな人に出会う。
「心は女性」だが、外貌はどうみても男性という性同一性障害者や、「心は男性」だが、外見はとてもかわいらしい女性という「男の娘」は現実に存在する。
前者が「心の性」に従って女性トイレに入ったら、やはりトラブルになるだろう。
後者が「心の性」に従って男性トイレに入ったら、性暴力の被害に遭わないか心配だ。

そもそも、その人がgender identityに沿ったトイレに入ろうとしているのかを、どう判別するのだろうか?
gender identityというものは目に見えるものではない。

一昔前、一部の愚かな性同一性障害者たちは、gender identityに沿ってトイレを「適切に」使っているかをチェックしようという主張をし、その方法として、gender identityの証明書(診断書)を常に携帯してトイレに入る際に(番人に)提示するという方法を考えた。
そんなことしたら、女性トイレの行列がますます長くなり、お漏らしする人が続発するだろう。

こうしたおかしな話が出てくるのも、目に見えないgender identityを基準にしようとするからだ。
gender identityは重要だが、残念ながら社会の表層では性別指標として機能しない。
社会の表層で性別指標として機能しているのはgender expressionである。

ヒールの高さを合わせて1m90cm近くあるスタイル抜群だけど女性としてはデカ過ぎる、女性の性別指標満載のど派手なニューハーフさんと、とても地味で女性としての性別指標が少なく性別があいまいな性同一性障害者と、どちらが女性トイレでより警戒されるか?
それは後者なのだ。
人の習性は、はっきりしないもの、あいまいなものを怪しむ(不審に思う)からだ。

だから、トイレの利用はgender expressionに沿うのが最も合理的だ。
「女性の恰好をしていたら女性トイレ」という1990年代の女装クラブの経験知が合理的ということ。

現実には、gender expressionに沿ったトイレの使用にリスクを感じる人は「多目的トイレ」利用すれば良いと思う。
だから、私は「トイレ問題」については、「多目的トイレ」の増設を主張してきた。

最後に一言、「LGBT専用」のアパルトヘイト・トイレだけは絶対に止めてほしい。
そんなもの誰も望んでいないのだから。

【追記(10日2時)】
誤解があるようなので、追記しておく。
私は「誰もが使いたいトイレを気兼ねなく使う」ことに反対しているわけではない。
むしろ大賛成で、早くそうした社会になることを願っている。
ただ、残念ながら、その実現は、明日、来月、来年には難しそうだ。

高邁な理念に基づく理想を掲げつづける人は、ほんとうに立派だと思う。
そうした尊い行いを否定するつもりはさらさらない。
ただ、そういうことは私の柄ではなく、他の人に任せたいと思う。
私は地べたを這いずって生きてきた人間らしく、現実に則して物事を考え、記していきたい。


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コメント 5

さゆりん

1996~2003年の間に新宿を中心に活動し、その後冬眠生活に入り、2年前に復帰したMtFの者です。そして復帰して一番驚いたのが、このトイレ問題でした。皆さん普通に男性トイレへ入られるんです。冬眠している間に、なにか法律でも変わったのかしら、と調べたりしてしまいました。
by さゆりん (2017-07-10 02:03) 

yahiro

GID/MTFの人は女子トイレを使うことにこだわりがありそうですが、ネイティブ女性は出来れば空いてるんだから男子トイレも使わせてほしいという人が相当います。
間に共用トイレがあればバッファーになるのですが、施設がトイレだらけになるので現実的には無理でしょうね。
同情されないのであえてトイレに突撃して抗議活動とかしないですけど。

コミケのトイレ運用は面白いですよ。
女装で男子トイレ使っても良いし、性自認で女子トイレでも良い(はず)だし、女子トイレ不足で男子トイレを臨時の女子トイレにしたりしとります。
女子トイレは死ぬほど混むのであえて女子トイレに並ぶ気がしない、コミケは数少ないおちんちんに感謝する日です。
生理用品出してるメーカーは女性用使い捨ておちんちんを発売したらイベント会場で売れると思うんですよね。
by yahiro (2017-07-10 03:14) 

三橋順子

さゆりんさん、いらっしゃいま~せ。

貴重な証言、ありがとうございます。
おっしゃる通りで、私の新宿時代(1995~2003年)は、女性トイレを使うのが当たり前でした。
夜の新宿の場合、男性トイレの使用は、かなりリスキーだと思うのですが。
by 三橋順子 (2017-07-19 22:55) 

三橋順子

yahiro さん、いらっしゃいま~せ。

MtFのGIDの方は、女性トイレの使用にこだわる方が多いように思います。
そこらへんトランスジェンダーの方が現実的というか、柔軟かも。

コミケのトイレ運用についての情報、ありがとうございました。
by 三橋順子 (2017-07-19 22:59) 

えみりゅん

今から20年以上前は、女性の服装をしている時点で女性用トイレに入るのが当然にさえ思っていました。
しかし、2002年ごろに福岡県だったか女装して女性用トイレに入り捕まったのが引き金で今のようなトイレ問題が明るみになったのでしょうか?
by えみりゅん (2018-05-11 20:31) 

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